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コラム

ひなた代表の毛利美絵からの訪問看護を担う次の世代へ向けたメッセージ

2024.11.9 エピソード

印象的な利用者さんのこと

最期まで“らしく”生き抜くために私たちができること

ひなた訪問看護ステーションが開業してから今まで、ずっと変わらないことがあります。それは、利用者ファーストであること。利用者さんが望む生活を送れるようにお手伝いすることが私たちの仕事であり、使命です。

利用者さんの望みを叶えたい

病院で看護師をしていた頃、ずっと歯がゆく思っていたことがありました。それは、患者さんが望むことを叶えてあげられないまま、旅立っていくのを見送るときです。 病院では、患者さんがなるべく安全に、快適に過ごせるように気を配ります。それはもちろん、とても大切なことです。ただ、たとえば、自分で料理がしたいとか、温泉に行きたいとかを患者さんが望んでいたとしても、それを叶えるのは難しいでしょう。対応しきれないと言ったほうが正しいかもしれません。 だからこそ、訪問看護ステーションを開業したとき、利用者さんの望みを少しでも叶えられるようになりたい、と心に決めていました。いえ、それがしたくて開業したと言っても過言ではありません。

初めての利用者さんの望んだこと

開業してすぐに看護させていただいた利用者さんのお話をさせてください。 その利用者さんは60代後半の女性。ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患っていました。ALSは徐々に全身が麻痺していく難病です。人によって最初に麻痺する場所も、麻痺をしていく順番も異なり、その利用者さんは足から麻痺が始まっていました。 ご自宅は、1階が工場、2階が住まいという構造。あいにく階段が狭くて昇降機を取り付けることができず、歩くことのできない利用者さんは、ロープを使い手で昇り降りをするしかありません。これが不自由なのは言うまでもなく、同時に危険でもありました。 そこで、1階に簡素な部屋を作ることを提案させていただきました。これは、越権行為と思われるかもしれません。けれど、私はケア・マネージャーでもあります。ケアマネは、利用者さんが言わなければ動かない御用聞きでは駄目だ、と私は思っています。利用者さんの望む生活に必要なものを積極的に整えていくことがケアマネの役割だと。だから、何ができるのか、そのために何が必要なのかを徹底して調べ、できることは提案していこうというのが私のスタンスです。 ご家族も、利用者さんも私の提案を受け入れてくださり、1ヶ月という急ピッチで新しい小さな部屋が完成します。そこで利用者さんは「夫のために料理がしたい」という望みも叶い、最期まで静かにときを過ごされました。

もっとできることはなかったか

我々が看護に入らせていただいて、半年ほどの短い期間で、その利用者さんは旅立たれました。初めての利用者さんでもあり、私自身、そしてスタッフたちの喪失感は大きなものでした。 あまりにも最期のときまでが早く、し足りなかったことばかりが浮かんで、もっと他にしてあげられることはなかったか、と悔やむ気持ちもあったのです。けれど、利用者さんの旦那さまが「悔いなく看取ることができた」と感謝を述べてくださり、少しは使命を果たせたのでは、と考えられるようになりました。また、この経験をして、改めて、利用者さんが望むように過ごせるように、これからも全力で取り組もうと、気持ちを引き締めたのです。

できないことは、できるようにするのがひなた流

利用者さんの望みは様々です。好きなもの、たとえば、そうめんが食べたい、パスタやステーキが食べたいというものや、桜が見たい、海が見たい、孫の入学式や卒業式に行きたいなど、一人ひとり、望みは違います。すぐに対応できるものもあれば、簡単には叶えられない場合もあります。さらに、利用者さんとご家族の望みが違うことも珍しくはありません。 けれど、どんな場合でも、どんな困難に直面しても、私たちは利用者さんの望みを叶えるための行動を止めません。もしもそれが不可能だと言われたとしても、なぜ不可能なのかを考え、調べ、不可能を可能に変えていく。利用者さんに「NO」とは言いたくない。いつでも、どんなときでも「大丈夫ですよ」と言いたい。そういう訪問看護ステーションでありたい、と思うのです。 私たちの仕事はサービス業です。利用者さんのその人らしさを実現するサービスを、これからも提供し続けていきたいと思います。